また風邪ひいて、一日中寢込んでました。
何というか今年の風邪は、一度治っても今度はまた別のものに罹ってしまうから氣をつけた方がいいぞ、と会社の同僚が話していたのを耳にしていたはいたのですけど、本當にその通りで、頭痛はないものの喉の痛みが耐え難く、とてもまともに本が讀めるような状態ではないので、以前讀んだもののなかからひとつ。
連城の作品のなかでもあまり名前の知られていない本作ではありますけども、以前とりあげた「 牡牛の柔らかな肉 」と同樣、これも怒濤のどんでん返しが凄まじい佳作です。
とにかく登場人物が皆ウサン臭い連中ばかり。ましてや本作の場合、テーマとなっているものが贋作ですから、作者自身の仕掛けはいうに及ばず、ミステリの定石通りに登場人物たちがお互いを騙しつつめまぐるしく話が展開してものですから、讀み終えたあとに「えっと、結局これってどんな話だったんだっけ……」みたいなことになってしまうのがこの作風の缺点といえば缺点でしょうかね。
ただこの本作がこの過激な作風の完成形ではないかな、と感じています。
まず「 牡牛の柔らかな肉」とは異なり、贋作というテーマとこの作風が見事にマッチしていることもあって、一癖も二癖もある登場人物たちの立ち居振る舞いを制御出來ています。また事実と嘘の反転によって構成されるエピソードのひとつひとつが物語の骨子と巧みに絡み合っているところがいい。
いまのところ最新長編である「流れ星と遊んだころ」は本作の作風の延長線上にある作品だと思うのですけども、この前の「白光」などは寧ろ初期の「暗色コメディ」に近い鬱々とした讀後感を殘す佳作でしたし、さてこれから連城はどんな作風に変化していくのか、ちょっと愉しみではあります。