あの多湖先生も讀んでる(嘘)中東編第四彈。前話で提示された壷の謎がいよいよ解かれるのですけど、なるほど、主人公が「見たろう? 今俺は、一度しかハサミを入れていない。そうだろう?」という通りに、タッタ一度ハサミを入れただけで見事に正方形になってしまいました。ボンクラの自分は最後の一手が頭に思い浮かばず結局判らずじまい、――などと悔しがっている間にも物語はテンポ良く先に進んでいくですけど、個人的には、この答えよりも、その答えによって示されたあるものが物語を次のパートへと進めていく伏線となっている結構に關心至極。それともうひとつ、興味深いなと思ったのが、主人公がこの壷の謎の答えに至る時の「気付き」でありまして、このひらめきのシーンが何となく、「占星術」で、御手洗があのトリックにあるものがきっかけで解答に至る場面を思い起こさせます。
しかしすでにタイムリミットが迫っているこの状況をどうやって打開するのか、何しろ飛竜がいるような物語世界ゆえ、紅海までにたどり着くのにも何かマジックのような、奇天烈な方法があるのかと勘ぐっていると、ここで素晴らしいある「もの」が登場。これがまた士郎画伯の素晴らしすぎる絵によって見事に具現化されていて大感動。これは個人的には第一部で登場した例のマシンと並ぶお気に入り。
ちなみに毎話で期待してしまう主人公とサミラのやりとりなんですけど、今回はとあるシーンでまたまたヒステリーを起こしたサミラを「もうしわけありません。彼女は頭がおかしくて」と完全に狂人扱いした挙げ句、その台詞がまたまたサミラのヒステリーを悪化させる場面にニヤニヤしてしまいました(爆)。
もうひとつ、今回はサミラと主人公がキスをして、ある人が癇癪を起こしてしまうシーンがあったりするんですけど、まったく主人公のモテモテぶりには嫉妬しつつ、個人的には御手洗ほど超然としていない主人公ショーンの造詣は結構好きで、友人たちの死を前にして時に自暴自棄になったり、天才肌の実力を持ちながらも、決して奢ることなく天命を意識しながら難問へと挑んでいく彼のキャラは吉敷に近いような気がするのですが如何でしょう、と御手洗よりも断然吉敷派の自分としては主人公に声援を送ってしまうのでありました。
で、最後の最後、再生の女神、アイラが登場する、というところで後もうホンの少ししかページが残っていないので、いったいどうなっちゃうのかと思っていると、……ええっ、これで終わりですかッ、というほどの不可解なシーンでジ・エンド。何だかこの雰囲気は「眩暈」の冒頭、謎の提示として挿入されていた件の手記で、アレが復活したシーンで終わりとなったところと同様の讀後感で、……ということはこの「再生」の意味も、本格ミステリとしてシッカリとした解答が示されるのか、それとも、――ということで、ゲス野郎の天下で幕となる第一部に比較すれば、最後の直前までの爽快感は素晴らしいとはいえ、またまた寸止めで幕となってしまったことで、この後の展開が気になって仕方がありません。
しかしこの第二部は御大小説史上、最高の興奮度でありました。恐らく第三部も完結してからイッキ讀みするかと思います。