実は第二部がすべて出揃うまで積讀にしておきました。というのも、第一部の面白さを鑑みるに一ヶ月もお預けを喰らってしまうと、自分のようなロートルにとってはどうにも物語にのめり込んでいる時の高揚感がその間に削がれてしまうというか何というか、……これだと一ヶ月に一冊リリースという大河ノベルの讀み方には反する譯ですが、まあ、そこはそれ。
で、第四話なのですけど、戦中を思わせる物語世界に、ママが怖いとSFマシーンとクズ野郎の蛮行などなど、とにかくエンタメ要素をイッパイに凝らした第一部から一轉して、今回の舞台はイスラム風。「物語は一挙、中東へ!」と宣伝文句にはあるものの、何しろ竜が存在しているようなファンタジー世界ゆえ、このあたりの竜の正体が果たして最期の最期、論理によって現実的な解を見せるのかそれとも、――と、「本格ミステリ」としての結構における作中の幻想的「要素」と「設定」とのせめぎあいについては、まだまだ予断を許しません。
何しろ「絶対にこんなのありえない!」と思っていた「タンジール蜜柑共和国」が御手洗の謎解きによってリアル世界へと見事な変容を見せる御大マジックが、このCFWではいったいどのような離れ業を見せてくれるのか、本作でもこのあたりがやはり気になります。
今回は第二部の序盤ということもあって、大きな謎は提示されてはいないものの、それでも竜の存在するファンタジー世界という設定を活かしつつ、例えば敵軍だけは何故竜の襲撃を受けないのか、というあたりでさらりとシンプルな謎解きを見せたりと、冒険譚を基調にしながらもシッカリと謎解きの愉しみを押さえてあるところが素晴らしい。
しかしそうしたミステリとしての要素を粗探しする暇もないほどに、冒険譚としての流れが秀逸で、何しろ冒頭から司祭が登場して、神様のお告げだからアンタらはこれから死地を抜けて女神に会いに行かなきゃならん、その期限は五日間、――とタイムリミットまで設定してのむちゃくちゃな要求をブチあげます。いくら一流の軍隊といえどもどう考えても五日じゃ無理、というわけで、皆が皆、出来ないムリムリとゴネるものの、何しろ神様のお告げでありますから問答無用。
出来ない理由は聞きたくない、といっても、何しろ命がかかっているものだから、日本のリーマンたちが社畜となって日々カイゼンに勤しむようなものとは譯が違う。結局、千人もの精鋭たちはその土地を目指すことになって、――という始まりから、いろいろな困難が彼らに襲いかかってきて、次第次第に人数が減っていくんだろうなア、なんて考えていたら、もう最初の谷を越えたところで竜の襲撃を受けて、アッという間に千人が十数人に(爆)。
ひとまず主人公の推理によって、第一の竜の谷はどうにか乗り越えたものの、何だかこの後はもっと凄まじい困難が待ちかまえているようで、最期の最期に残るのは恐らくこの主人公のモテモテ君だろうかと予測は出来るものの、個人的には歌のうまいボーイがどうなるのか、そしてこの主人公へ盛んにモーションをかけまくった挙げ句、そのあまりにシツこさに主人公から「おっぱいを斬られたい? 自慢のおっぱい」と脅されてしまった踊り子娘とのロマンスはどうなるのか等々、脇役たちの今後も気になって仕方がありません。
という譯で、これから第五話を讀み始めようと思います。