かなり間が開いてしまったのですけど、前回の續きです。本当はこの前に「幻影城の時代」が出版される経緯について簡単に述べているところがあるのですけど、すでに他の場所で語られていることでもあるので割愛し、最後に島崎御大が台湾のミステリ讀者にオススメの日本の小説十選を挙げているところを紹介したいと思います。この後、さらに質疑応答があるのですが、また機会があったら取り上げてみたいと思います。
台湾で出版されているおすすめの日本傑作推理小説十選
傳博……
最後に、ここ五年の間に台湾で出版された日本の推理小説の中から皆さんにおす すめしたい傑作を十冊、選んでみます。一. 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」 小知堂文化 二〇〇五年、八刷
二. 夢野久作「ドグラ・マグラ」 小知堂文化 二〇〇四年、十二刷この二冊は日本の推理小説における四大奇書といわれているもののの中の二つで ありまして、日本の推理小説の両極(謎解きとサスペンス)を代表するものです。 二冊ともに四十万字ほどの作品ですが、その内容はというと難解にして複雑で、よほどの根性がないと讀み通すことは出來ないでしょうね。特に「ドグラ・マグラ」は純文學と比べても、そちらの方に近い作品でありまして、日本の純文の評論家からも大変な評価を得ています。「黒死館殺人事件」は純粋な謎解き推理小説ではありますが、古代ギリシャ文學の衒學趣味溢れるもので、また謎の宝庫と もいえるものであります。
三. 横溝正史「獄門島」 獨步文化 二〇〇六年、十刷
四. 松本清張「点と線」 商周出版 二〇〇六年、一刷→獨步文化江戸川乱歩とこの二人の作家は、日本の推理小説におけるここ百年の歴史の中で も三大高峰というべき作家であります。横溝正史は戦後、謎解き推理小説を確立 した人物で、「獄門島」は本格派の最高傑作であります。また松本清張は社会派 推理小説の創始者であり、「点と線」は社会派を確立した記念碑的な作品です。
五. 土屋隆夫「危険な童話」 商周出版 二〇〇六年、三刷→獨步文化
土屋隆夫は写実派と謎解きの融合を成し遂げた作家でありまして、「危険な童話」はその彼の最高傑作となります。
六. 宮部みゆき「模倣犯」(上、下) 瞼譜出版社
宮部みゆきは日本人が国民的作家と認めている作家でありまして、作品のジャンルも幅広いのですけど、「模倣犯」はその中でも最高の推理小説でしょう。
七. 島田荘司「占星術殺人事件」 皇冠文化 二〇〇三年、八刷
八. 綾辻行人「十角館の殺人」(新装版) 皇冠文化 二〇〇六年、九刷
九. 有栖川有栖「双頭の悪魔」 小知堂文化 二〇〇七年、五刷
十. 京極夏彦「姑獲鳥の夏」 獨步文化 二〇〇七年、六刷以上の四名は新本格派として活躍している作家で、「占星術殺人事件」と「十角 館の殺人」の出版があったからこそ、現在の新本格の興隆がわき起こったわけで す。新本格派は現在の日本の推理小説の大きな二つの主流、――その中の一つであります。「双頭の悪魔」は有栖川有栖の代表作ですが、ほかの三作はいずれも作 者の處女作であるとともに、彼らの代表作にもなっています。そしてこれらの四 作はその豊穣な「新本格推理小説」の内容によって、新本格派の発展に多大な影響を与えました。
この後に掲載されている質疑応答も日本語にしてみました。こちらを参照下さい。