大河ノベルズの第二話で、物語の方はこちらの期待通りに、件の怪しいマシンを稼働させた結果、ママがトンデモないことになって、――というもの。第一話の、少年の目から見た暗い時代の中の一幕みたいな雰圍氣よりも、何だか楳図センセ的な「ママがこわい」を彷彿とさせるホラー的な展開になってきましたよ。
ジャケからして、辛い時代でもママと一緒のジッと我慢の子であった、みたいな第一話とのそれとはマッタク異なり、ボーイの背後で邪惡な眼をしてボンヤリしているママの図、というものでありますから、第一話で溶解人間となってご臨終となった男や伯父さんたちとの暖かい交流という圖式は早々に崩れて、本話ではママの突然の変貌に当惑するボーイの内面がジックリと描かれていきます。
「おしっこ」とかアバズレな言葉を吐き散らし、ボーイの前でも平氣でエロッぽい格好をしているママの突然の変化に、ボーイは狐憑きつとの結論を下すのですけど、後半では夢と現實が交錯し、何やら幻想風味を湛えた不思議な風格へと流れていくところも、果たしてこの物語がどのようなところへ着地するのかまったく予想が出來ないものへとしています。
怪力光線砲についても伯父さんの言葉をそのまま信じてしまえば、海野十三みたいなトンデモも交えた奇想SFなのか、なんて考えてしまうし、その一方で、本作は成長したボーイが過去を回想するという結構で描かれていくゆえ、そのような奇想もひとつの謎として最終的には本格ミステリ的な結末を迎えるのではないか、……とかここでもまた色々と考えてしまいます。
これらの怪異が最終的には本格ミステリ的な謎として回収され、現實的な解を与えられるというのであれば、回想の体裁をとっているこの物語において語り手はすべての真相を知っている上でこの話を綴っているということになる譯で、時折「あのときは――」はみたいな回想を交えて語られる語り手の言葉に何處か悲劇的な口調が感じられるところもまた物語に緊張感を与えているような気がします。
今回は特に士郎氏の絵が見事で、特に前半デーンと表れる怪力光線砲の描写が素晴らしい。第一話のジャケなどに見られる凛とした雰圍氣とはまったく異なり、どこかエロく、獸めいた邪惡さを感じさせるママもまた素敵で、これから少年とママ、そして伯父さんとの三角関係がどのようになっていくのか、戦争という時代の中の大きな物語の今後が氣になるのは勿論なのですけど、個人的にはどうにもそちらの方が氣になってしまいます。
最初はイッキ讀みした方がいいかな、なんて考えていたのですけど、この毎月刊行という形式も慣れてしまうと雜誌の連載とはまた違った趣があって存外に愉しめることが分かりました。とりあえず次話にも期待したいと思います。