大石圭初体驗がこの小説。現在のところ、氏の最高傑作は「アンダー・ユア・ベット」だと思っているのだけども、「アメリカンサイコ」の模倣というのは拔きにしても、その拷問方法などに工夫が凝らされており、初期の「死者の体温」などに比べると愉しめるところが多い。
お氣に入りの拷問方法はやはりヤンの飼い主であった中年教師でしょうか。首に繩をかけられた状態でずっと立ちっぱなし。これは辛い。主人公も「この三日間の苦しみをちょっと想像してみるだけで、下半身がだるくなる」なんてサラっといっていますけど、三日も眠らないでずっと立ちっぱなしなんて想像しただけで怖いですよ。
もう一つのお氣に入りは、公園の池の魚を死なせてしまった男に対する拷問。水をいっさい与えないで、辛いもの、乾きものだけを与えるというやつ。水を飲みたければ洗劑を溶かした水を飲めッというんだからこれもむちゃくちゃイヤーなかんじがします。
またこの小説では氏の小説のなかで度々繰り返されるモチーフや小物が登場する點にも注目したい。「胎兒のときの殺人」というのは、「処刑列車」に通じるし、鬼畜の醫者というのは「湘南人肉医」でも再び使われています。またオーラルセックスへの執着というのも「アンダー・ユア・ベット」で出て来る。
そういえば「湘南人肉医」が映畫になるって話をどっかで讀んだ氣がするんですが、あれってもう完成したんですかね?