「アンデッド」の続編で、同じ角川ホラー文庫からリリースされた三津田氏の死相学探偵シリーズが、本格ミステリ的な結構に一話完結で見せてくれたのと比較すると、この福澤氏の手になるアンデッドシリーズ、どうやらシッカリと続き物になっているようで、前作で封印した悪霊がまたぞろ活動を始めたみたいでヤバい、みたい展開で見せつつ、中盤から物語はサイコ的な恐ろしさも交えて妙な具合に進んでいきます。
今回の連續自殺事件で、この自殺にまたもや例の場所が絡んでいるらしい、というところから、前作で封印した殺人鬼の悪霊がすわ復活かと思わせておきながら、さりげなく添えられたイジめテーマと過去の奇妙なコロシを絡めて、物語は次第に捻れを見せていきます。
悪霊を成敗するというフツーのホラーものかと思っていたら、件のヒロインの霊感に絡めて、何やら謎めいた霊媒師が出てくるわ、時間と記憶の空白なども鏤めつつ、物語は件の悪霊對娘っ子たちというシンプルな構造のさらに奥深くにある何かを予感させながら、ほとんど寸止めみたいなブッタ切りでジ・エンド。これは辛い。この後の展開がもう気になって仕方がありませんよ。
今回はヒロインの霊能力がさらに深化を見せつつ、世の中にいる怨霊もアイツ一人ではない、みたいなことが仄めかされていくゆえ、このあたりは次作への伏線かと推察されるものの、ヒロインの時間や因果を超越する霊能力などがどのようなかたちで発動するのか、またそれが件の悪霊の対決とどう絡んでいくのか、さらには悪霊が跋扈するアッチの世界はどうなっているのか、……等等、そのまま明かされない謎もテンコモリゆえ、本作は寧ろ次作への序章めいた雰囲気を感じさせます。
二作目ともなれば、キャラの造詣はよりはっきりとしていて、特に文芸部連中のオチャラケぶりと軽妙な会話には吹き出すことしきり、福澤氏にこうしたユーモア・センスがあったのを知ることが出來たことはは本作の大きな収穫で、よくよく考えてみれば、抜群に怖い物語を綴ることが出來る作家というのは、楳図氏しかりクラニーしかり、また卓越したユーモアセンスの持ち主でもある譯で、若者言葉をやや無理矢理に繋げながらも、それを違和感なくテンポのよい会話へと繋げてみせるシーンの見せ方や、彼ら文芸部の相談役とでもいうべき、そのキャラ立ちはほぼ作者である福澤氏をイメージさせるホラー作家がまたいい味を出しているところもいい。霊から法律から行政から、若者が知らないもろもろの専門知識についてはすべてこのホラー作家が受け持って、読者に向けて判りやすく解説をしてくれるところも秀逸です。
ちなみに前作では大盤振る舞いだったウップオエップの殺し方についてですけど、今回は控えめで、最後にチラッと出てくるだけ。しかし一度きりとはいえ、今回のもまた考えるだけで體が震えてしまうような激しいネタを投入してくれるあたり、気持ち悪いのダーイスキというグロマニアも満足すること請け合いで、さらにはこのコロシのハンムラビゲームに無理矢理参加させられることになる人物というのが、最後の最後でコマッしゃくれた性格であることが明らかにされたワルゆえ、その意味では気持ち悪いながらも勧善懲悪的な爽快感があるところも好感度大。
最後の最後で「了」なんて書いてあるのですけど、ここは「続く」とするべきであることは明らかで、謎めいた女とヒロインとの関係や、例の時間の超越はどうなっているのか、さらには件の悪霊はこの時間の超越に絡めて、リアルの世界ではどうなっているのか等、讀了したあとの疑問点もまた多く、一刻も早い次作のリリースを期待したいと思います。